blank13を観て。

情報解禁になってから、この日をずっと待ち侘びていた。

高橋一生リリー・フランキー松岡茉優、神野三鈴、斎藤工の並びは観逃せねぇ…

ということで2月11日、blank13を観て来ました。

 

まず言いたいのは

高橋一生が気になる人は観逃すまじ

ということ。

 

先日発売されたCREA

 

高橋「今回は、撮影前から何度も工さんとお話させていただく機会を作っていただいたんです。実は台本をいただく少し前に、この物語に近いことが僕の現実に起きて…母が亡くなったんです。」

齋藤「そんな事情を僕は全く知らなくて、なんて酷なお願いをしてしまったんだろう…と」

高橋「僕はお声をかけていただいて嬉しかったんです。ただ、現実とあまりにシンクロしていたので、役にシフトできず、僕自身が画面に表れてしまったら怖いと思い、一度は(出演は)難しいかもしれませんという話になったんです。けれど、工さんとコミュニケーションを重ねるうちに、このタイミングでお話をいただくのは偶然ではなく、僕の人生の「流れ」なんじゃないかと思いはじめた。僕も普段なら絶対話さないような個人的なことも話せていましたし。工さんはとても好きな俳優さんでしたし、この機会にご一緒できるならぜひ、ということになったんです。」

 

という高橋一生が、オファーを一度渋ったものの斎藤工監督の熱意を受け、出演を決心したエピソードが綴られている。いやぁ、色男同士の熱いやり取りグッと来るぅ…。語彙力が無いからこれしか言えないが、カッコいい。本当にカッコいい。このやり取りを知って、何が何でも絶対この映画観逃せねぇわ…と決めた。

 

 

ストーリーですが、予告からはみだしたところは無かったと思います。

(予告のナレに、板谷由夏さんを抜擢した方に大きな拍手を送りたい。実は、板谷由夏さんの人柄・顔・声すごく好きで…。Instagramの通知オンにしてるくらい…笑)

 

https://youtu.be/_HoWeat_IM0

 

ただし、観終わってから私の心の中にはとんでもなく気持ち悪い感情が蠢くようになった。いいきっかけになった素晴らしい映画だったと思う。

 

私がblank13に感じたのは「親子関係の呪い」。

 

ここ1年の逃げ恥・カルテットの根底にあった

「過去のしがらみや苦しみからは解放されよう、逃げてしまえ、いいじゃないか」というような流れをせき止められた感覚もある。

 

だけど、その場で逃げたところで、結局逃げられないのだ。

私の考えが甘かっただけのことだけど。

 

本編中のサオリ(松岡茉優)からコウジ(高橋一生)への

「お父さん(リリー・フランキー)のお見舞い行こう。

お父さんのお見舞い行った方がいいと思う。」

 

は、

 

カルテット3話の真紀(松たか子)からすずめ(満島ひかり)への

「すずめちゃん。軽井沢帰ろ。

病院行かなくていいよ。かつ丼食べたら軽井沢帰ろ。

いいよいいよ。みんなんとこに帰ろ。」

 

と対極を成すのでは、と感じた。

サオリは、「逃げるな」と。

真紀は、「逃げてもいいよ」と。

 

もちろん、すずめが父親の最期を看取らず(+亡くなった父に会いに行かない)逃げたからといって、過去のしがらみからは逃げられるわけではない。寧ろ区切りを付けられないから、苦しみ続けるのではないだろうかと私は思う。しかし、すずめの傍には真紀がいて別府がいて家森がいる。居場所がある。そんな居場所があれば、しがらみからは逃げきることはないが、少し忘れて「今」の暮らしを楽しめる瞬間があるのではないだろうか。

(今更だが、すずめの財布の中に鍵が増えていなかったか。序盤では一つだった気がする。増えたということは、父親の墓の鍵だったのだろうか。あの後、海が見えるところに移せたのだろうか。とかいう風に、カルテットでは、普段の私たちと同じように全てが語られる訳ではない「人間の暮らし」が、本当に素晴らしく描かれていたと思う。)

 

対局を成すと書いたものの、コウジにもサオリという居場所があった。だからこそ、コウジは父に会いに行く決断ができたのだろう。コウジがサオリに、父親への憎き思いを話していたのか、憎き思い出の中にも実は良い思い出があったことを話していたかは分からない。描写されてはいない。だが、サオリはコウジの仕事中の異変を感じ、後悔するのではと思ってコウジにあのような言葉をかけたのではないだろうか。

 

 

コウジは躊躇うも、病院へ行き面会を果たした。

 

 

その後、父が亡くなり葬式を開くと、参列者である父の仲間たちから兄ヨシユキ(斎藤工)・コウジが知らない“お人好しな父”のエピソードが語られる。

佐藤二郎を皮切りにしたここからのシーンは、本当に笑いを堪えるの必死だった。

ある種、ショートコント「お葬式」だった。

あれを観るだけでもお金を払った価値はあると思う。(言い過ぎ)

ヨシユキ(斎藤工)とサオリ(松岡茉優)はちょっと笑ってた気がするよ?笑

あれは笑わずにはいられないと思う…笑

 

 

ただ、このシーンの高橋一生の表情が本当に凄かった。怒りなのか、呆れなのか、安堵なのか、様々な感情がひしめき合う何とも言えない表情をしていたと思う。去年のA-Studioで、高橋一生は自身の母親との軋轢を話していた記憶もある…(間違っていたらごめんなさい)。そんな微かな記憶もあって、凄み厚みを感じた。私が勝手に高橋一生をコウジに重ねてしまった。あれはどういう感情だったのだろうか、私には絶対分からないだろう。

 

 

参列者から語られた“お人好しの父”と、父との思い出の回想(キャッチボールをしてもらったり、プロ野球選手のフォームのモノマネを教えてもらった)、自分が書いた作文を最期まで大事にしていた父のことを聞き、コウジは「父のことは大嫌いです。でも少し、好きな気もします。いや…正直よく分かりません。でも今は悲しい気もします。」という言葉で葬式を締めた。これは、どうとでも解釈できる。本音と建て前という風に…とか。

 

様々な解釈があるだろうが、私は、冒頭のヨシユキによる「なぁ向こうの寺の葬儀見た?」「人の価値を教えられた気がしたわ。」という呟きと、両家の故人の人としての価値が反転(向こうの寺の葬儀のくだりより)したことから、コウジの気持ちは、締めの言葉通りだったのではと感じた。

 

そこに、私は前述したように“親子の関係は呪い”だと感じた。ヨシユキもコウジも、幼い頃から苦労を知らされて13年間憎かったはず、どうして自分たちを置いて行ってしまったのかとずっと辛かったはず。手紙の「俺は好きに生きた。」なんて、自分勝手なことばかり言いやがってと思ったはず。この期に及んで「ありがとう」とはどういうことだ、とか思ったはず。でも、好きなのだ。良い思い出や自分が知らなかった父親の良い面を知ると、悲しんでしまう。大嫌いだったはずなのに、憎んでいたはずなのに、いい思い出が少しあるだけで、子は親を思ってしまうのだろうか、逃れられないのだろうか。

 

それに、妻である洋子(神野三鈴)が未だ指輪をはめていたことも印象的だった。捨てられたのに、洋子は夫のことを未だ愛していたのだろう。帰ってくることを信じていたのだろう。

 

ヨシユキもコウジも洋子も皆、可哀想だ馬鹿馬鹿しい愚かだ。これは私たちにも言える。家族は大きな支えにもなるけど、反転すると足枷になる。厄介な存在になる。憎き存在になる。家族って面倒くさい。人間は本当に変な生き物だ。

 

この解釈は、が感じたことであって、必ずしも皆さんの解釈はこうではないだろうし、親を嫌いであり続ける人もいるだろうし。私の考えは危険な考え方なのかもしれない、分からない、答えがあるんだろうか、いや、ないんじゃない?という風に頭も心もグチャグチャになっている。

 

という風に、blank13公式Twitterでツイートされた方の感想にも書いてあったけど、全然まとまらない。

まとまらないことをまとめました。笑

人間の話なので、そりゃまとまらないさぁとキーボードを打ちながら開き直っている。笑

 

 

高橋一生のコウジは本当に凄かった。喋り方・目の瞬きの仕方・歩き方etc…いつ何時も過去というしがらみから後ろ髪を引かれているようなお芝居をしていた。父と屋上で話すシーンのコウジの表情は…当てはまる形容詞が見つからなかった。直虎の高橋一生も素晴らしかった(ダイジェストしか観ていない…)が、blank13でもとんでもなく素晴らしいお芝居だった。恐ろしいですね、彼は。

 

リリー・フランキーは、いい加減なオヤジをやらせたらピカイチ。特に海街diaryのオヤジは一生好きだ。風吹ジュンさんとのやり取り大好きだったぁ。ぶっ飛び役とかも多いけど、是枝監督作品のリリー・フランキーが一番好き。マルチなリリーさんには嫉妬しかない。

 

松岡茉優ちゃん。これまでも、コンスタントに活躍をして来てはいたけども、2018年は松岡茉優ちゃんの年になるのは間違いないと思う。「勝手にふるえてろ。」も素晴らしかったし、6月には是枝監督最新作もあるとか。リリー・フランキーとまた共演!

 

神野三鈴さんは、もう‼‼‼素晴らしさを再確認しました。「駆け込み女と駆出し男」とか「Woman」でも、強烈な印象が残ってた。いやぁこの方凄い。神野さんの出演作探して観たい。

 

斎藤工監督、よくも私の頭と心をグチャグチャにしてくれましたね。余韻が半端ない。素晴らしい映画だった。工さん自身、日本だけでなく海外でも観てもらいたいとのことですが、届くのではないだろうか。blank13は、普遍的な親子関係を描けていると思うんです、私は。(坂元裕二作品が、海外でリメイクされて好評なように。私は、近しいものを感じた。)

いつかまた、斎藤工監督が創る映画を観れることを期待したい。

 

blank13は、お金と時間があればあと2回は観に行きたい。

観る毎、湧き出す感情が違ってくるかもしれない。どうだろう。

もう1回は必ず観に行かねば。